レンタルDVDかAmazon Prime Video で見ようと心に決めていたのですが・・・ついつい観ちゃいました。イオンで買い物をして駐車場へ向かう途中、ふらっと映画館に立ち寄ったらちょうどナイターの最終上映がもうすぐ始まるところ、後は帰ってのんびりするだけなのでとチケットを買ってしまっていたのでした。
原作7巻目の作品のタイトルで、映画では6巻から7巻に続くエピソードを描いています。第1巻の「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない 」のタイトルで5巻までのエピソードがアニメ化されていているので、テレビアニメの続きを映画化した作品です。
テレビアニメワンクールの後、続編アニメ映画化はよくあるパターンですが、この作品では7巻が一番熱く伏線を綺麗に回収して一段落つけるストーリーになっていて、アニメから劇場版の流れが綺麗に収まった感のある仕上がりの作品です。
当然、(そんな人はいないでしょうが)テレビアニメからの流れの続くストーリーなのでこの映画だけをみても意味不明です。アニメなり原作なりを踏まえている必要があります。ということで、アニメファン・原作ファンならみて損のない、いや観るべき作品であると強くお勧めしておきます。
このエピソードは、これまで習った方程式を全部使って大きな問題に取り組み一つの解を導き出すような物語の構成になってます。簡単にいうとアニメで描かれたエピソード毎の思春期症候群の現象や語られる解釈が、まるっと映画版のエピソードの下地として至る所に取り入れられていて、アニメを知っているからこそ映画でのエピソードを納得しつつ構成の妙に感心させられるのです。この物語のための前振りだったのか!と。当然、小説を読めば細かな心情の変化などが描かれていてさらに思い入れが深まること請け合いです。
以下、ネタバレあり注意!
大学生になった「翔子さん」が突然咲太のマンションに訪れる。行くところがないからと当分居候となるべく押しかけてきたのだ。麻衣と一悶着の末、麻衣も咲太のマンションで同居することになる。
同じ頃「翔子ちゃん」の容態が悪化し、すぐにでも心臓移植をしないと命が危ない状態になる。咲太は翔子ちゃんが小学4年生のとき自分の未来について考える課題があり、中学生まで生きられるかどうかわからない翔子ちゃんは未来に希望を持てず課題を提出できずにいたことを打ち明けられていた。さらに最近その課題プリントに自分が書いた記憶がない項目が記さるようになったという。咲太は翔子ちゃんを元気づけるために毎日お見舞いに来るからと励ます。
咲太は胸の傷から出血し再び思春期症候群の兆候が見られるようになる。相談した双葉の仮説によると「翔子ちゃん」と「翔子さん」は同一人物で、咲太の心臓を移植された「翔子ちゃん」が成長した姿が「翔子さん」であり、咲太の心臓を持つ「翔子さん」と咲太の心臓が同時に認識される状態になったことで矛盾が生じ胸の出血につながっているということのようだ。
そしてついに「翔子さん」から衝撃の事実が伝えられる。
双葉の仮説の通り「翔子さん」は咲太の心臓を移植され成長した「翔子ちゃん」で、咲太は12月24日に麻衣とのデートに行く途中で事故に会い死亡する運命にあった。「翔子ちゃん」は毎日お見舞いに来て励ましてくれた咲太に淡い恋心を抱いていて、咲太には生きていて欲しいと願い、3年前と現在、未来から咲太に会いに来たのであった。
だから、「翔子さん」は12月24日は麻衣とデートする予定であったイルミネーション会場で待っているので、麻衣とは違う場所でデートの約束をするようにと伝える。麻衣にイルミネーションデートを提案される咲太であったが「翔子さん」の言葉どおり水族館でクラゲを見ることを約束する。
ここから咲太の答えの見えない葛藤が始まる。自分が助かるために「翔子さん」の言葉通り麻衣との水族館デートを選ぶのか、その選択をすると「翔子ちゃん」は心臓移植を受けられず命を落とす可能性が高い。咲太の葛藤を知る麻衣は自分を選んでほしいと懇願するが、咲太は「翔子ちゃん」の命を選ぶだろうと考え行動する。また「翔子さん」も咲太は自分を犠牲にすることを予想し事故に合わない待ち合わせ場所を指定していたのだ。
しかし「翔子さん」の計画を悟った咲太は、本来待ち合わすであろう場所に向かって駆け出し、スリップして操作不能になった自動車に出くわす。その時、誰かに突き飛ばされ事故を免れた咲太であったが、そこに横たわっていたのは麻衣であった。
「あなたが思っている以上に私は咲太のことが好きなの・・・」この言葉の通り麻衣は咲太が命を落とさないよう咲太を守るべく行動したのだった。
自分の選択の結果、麻衣を失いさらに「翔子ちゃん」に自分の心臓を移植してあげられなかったという事実に打ちのめされ、抜け殻のようになった咲太のもとに再び「翔子さん」が現れる。「翔子ちゃん」は麻衣の心臓を移植されていたのだ。よって咲太の胸の傷は消えていた。
さらに、咲太の行動によって麻衣を助けることができると告げる。
この世界は、小学4年生の「翔子ちゃん」が未来に絶望し未来を望まない強い気持ちが引き起こした思春期症候群で未来をシミュレーションするいわゆるラプラスの悪魔の現象が引き起こしたもの(2巻・プチデビル)で、現実の時間とはずれていて、この世界の中であれば、過去へも未来へも自在に移動できるらしい。その力を使って「翔子さん」は咲太に会いに来ていたのだ。(1巻・バニーガール)
ただし、時間を移動するとそこに存在するもうひとりの本人とは接触できず(電話での会話は可能。3巻・ロジカルウィッチ)、移動した時間軸で自分を認識してくれる誰かに見つけてもらわないとそこに存在することができない。3年前海岸で「翔子さん」は咲太に認識してもらえたことで咲太と交流を持つことができたのだ。(1巻・バニーガール)
「翔子さん」の協力で12月24日に戻った咲太は、やはり誰からも認識されず、麻衣のバニーガール姿(1巻・バニーガール)にならってなのか放置されていたうさぎ(バニー)の着ぐるみを身に着け目立つ行動をするが徒労に終わる。そこに、駅で困っている咲太の夢を見て気になったという朋恵が現れうさぎの姿をした咲太を見つける。尻を蹴り合い量子もつれの関係となった朋恵がキーマンであったのだ。(2巻・プチデビル)朋恵によって認識され普通に行動できるようになった咲太は朋恵にこの世界の咲太と会い朋恵のスマホで話せるようにすること頼む。(3巻・ロジカルウィッチ)これから起こることを説明して、イルミネーション会場に行かないよう説得するが当然聞き入れられない。
次にのどかにお願いして、麻衣の仕事場所に連れて行ってもらう。咲太にとっては数日ぶりの麻衣との生きた姿での再開に安堵する。これから起こることを麻衣に説明して、麻衣を悲しませたり失ったりするような行動は絶対しないし必ず麻衣のもとに帰ってくると誓う。その決断には「翔子ちゃん」を咲太が助けられないという結果があるのだった。
しかし、その決断をした背景には「翔子さん」からこの世界が未来シミュレーションであることを知らされたことで、「翔子ちゃん」が咲太もしくは麻衣から心臓移植を受けて生きている姿の「翔子さん」が存在しているということから、咲太や麻衣以外の心臓を移植される可能性もありそれに掛けたのではないか(と思うが考えすぎか?)。
その反面、この未来シミュレーションでこの時間の流れが選択されないなら、これから「翔子ちゃん」が確定させる未来では咲太とかかわらないことで咲太を助ける選択をすることは間違いなく、結果咲太は麻衣や翔子と出会えない可能性も考えられるのだ。そのことをわかった上で咲太と麻衣はお互いに必ず見つけて出会うことを誓うのであった。
麻衣との話し合いで、麻衣が事故に巻き込まれることはなくなったが、このままでは咲太が事故にあう未来は変わらない。そこで咲太が取った行動は・・・
着ぐるみの姿のままでこの世界で事故に合う咲太を麻衣がしたように突き飛ばすことであった。同じ空間に二人が存在できない以上咲太の姿のままで接触することは不可能であるが着ぐるみのうさぎ姿であれば咲太とは認識されずこの世界の咲太との接触はできると考えたのだ。結果、突き飛ばした(接触した)瞬間に一人に統合されたのだった。(3巻・ロジカルウィッチ)
そして時間が戻り、小学4年生の翔子ちゃんが未来についての課題に取り組むところから時間が進み出す。思春期症候群のラプラスの悪魔によって未来の自分を経験した(おそらく咲太との学生結婚も体験したのでは?)翔子ちゃんは、自分には希望に満ちた未来が存在する可能性を知り未来への不安や絶望を克服し積極的に課題に取り組むことができるようになっていた。
時間が進み「翔子さん」と出会うことがなくなった咲太であったが、未来シミュレーションでの翔子さんとの強い絆(初恋)は、心に刻まれていて夢に現れることで咲太が峰ヶ原高校を選ぶきっかけとなる。翔子以外の出会いは、ほぼ未来シミュレーション通りに進み、麻衣とも恋人になる。
違う点は、未来シミュレーションで麻衣はホラー映画の演技で高い評価を受けていたのが、心臓移植を待つ少女の物語に主演しその映画は世界で評価されそれがきっかけで心臓移植に対する関心が高まりドナー登録者が大きく増えたのだ。咲太は咲太で病気で苦しむ人達への小銭募金に励むようになっていた。
そして、事故に合うクリスマスを何事もなく過ごし年が明け、麻衣とのデートで七里ヶ浜海岸を訪れた時、両親とともに海岸ではしゃぐ少女の姿を見つける。初めて合う少女であったが、懐かしさがこみ上げ思わず「牧之原さん」と叫ぶ咲太であった。少女は溢れ出す涙を拭うことなく「はい、咲太さん!」と笑顔で答えた。
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アニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」から映画「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」につづくこの作品は、アニメ作品「青春ブタ野郎」シリーズとしてここまでで完璧に完結した作品として見ることができます。
小説では、まだまだシリーズとして続いているのですが、映像作品としてここで完結していても何ら問題なく、これほどきれいなエンディングで終わっている作品なので、以降は蛇足になってしまいそうです。
小説ファンとしては、続きをアニメ2期として観たいというのはあるにはあるのですが・・・
タイトルといい設定といい、かなり中二設定であるのでそれだけで受け付けないという方も少なくないでしょうが、これほど構成が絶妙な小説にはなかなかであえないのではないかとおもいます。なのでアニメもいいですが、エンタメ小説が好きなら毛嫌いせず読んでみることをおすすめします。涙腺がかなり刺激されることうけあいです。
青少年期の心の葛藤や友人や家族との付き合い方など、悩みながらみんなが一度は通った道を思春期症候群という不思議現象を交えて見事に描いています。空気のように振る舞い周囲から認識されなくなると姿が見えなくなるとか、尻を蹴り合うと量子もつれがおこり思春期症候群の現象に巻き込まれるとか、かなりの中二設定ではありますがある意味突き抜けていて物語の伏線として読むとなかなかおもしろい設定になっていたりします。
ただ、かなり展開が複雑で未来シミュレーション中に過去もに未来もに行き来できるとか未来シミュレーションの世界で別の未来シミュレーションをおこしているとか、この展開はどのように解釈すればいいのか?と理解が追いつかないストーリー進行もあったりします。このあたりは、設定上矛盾のないストーリー展開なのかゴリ押し展開なのか読み込んで検証し考察のしがいがあるとも言えるのです。
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