「【映画】青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」の記事で「青春ブタ野郎シリーズ」と映画の感想をざっくりと書かせてもらいました。よく練られた絶妙な構成の小説であるとおすすめしたので、ここでは小説の概要とストーリーの流れを自分の備忘録としての意味も含めあらためて紹介しておくことにします。
主人公・梓川咲太は、高校2年生。親と離れ妹と二人で暮らしている。学校では周りの空気に流されたり、空気を読よみあうような友人との付き合いを嫌い孤立していた。ある日街の図書館でバニーガール姿をした一つ上の先輩で芸能活動を休止中の人気女優の桜島麻衣を見つける。彼女によると最近周りの人たちから認識されにくく見えていないようなので、目立つバニーガールの格好で街をうろつき認識される場所を確認しているという。
この不思議な現象は、自分に起きているのと同様の現象・思春期症候群だと考えた咲太は、二人だけの友人の一人双葉理央に解決策を相談する。科学部で物理学に通じる双葉は、物理理論のシュレディンガーの猫に例え、学校で誰とも関わらず空気のように振る舞う麻衣が周りから空気のような見えないものと認識し始めため存在自体が認識されにくくなっているのではとの仮説を立てる。
母からも忘れられ次第に麻衣を認識できる人が減っていきとうとう咲太だけになる。眠ることで忘れると考えた咲太は麻衣を忘れないために眠らず解決策を探るが・・・
公開告白で麻衣との距離を縮めた咲太は、麻衣との初めてのデートに向かう途中で迷子の少女を見つける。一緒にお母さんを探そうと少女の手を引いていると後ろからお尻を蹴られる。少女にちょっかいをかけていると誤解した古賀朋恵が攻撃してきたのだ。誤解だと分かった朋恵はお詫びに私のお尻を蹴れという。こうして咲太は朋恵と尻を蹴り合う仲になった。
一ヶ月毎日告白を続けた咲太はようやく麻衣のOKをもらい付き合うことになったのだが、翌日目が覚めると前日に戻っていてOKがないことになっていた。これは同じ日を苦返すという悪夢の始まりであった。
双葉によると物理理論でいうラプラスの悪魔による未来シミュレーションを誰かが引き起こしているのではとの仮説から前と違う行動をしている誰かを探せと言われる。
途方に暮れながら麻衣と昼食を共にするため空き教室に向かうと前日、先輩から告白されていた朋恵が隠れているのを見つける。朋恵がラプラスの悪魔の原因で尻を蹴り合ったことから量子もつれにより咲太も巻き込まれたらしい。
告白から逃れたことで同じ日を繰り返す現象から逃れられたが、根本的解決には至っていないので、今後の告白を阻止するために朋恵から夏の間偽装恋人になるよう頼まれる。やむに止まれず承諾した咲太はさらなる思春期症候群に巻き込まれることになる。
本屋でメガネをかけていない双葉に出会った後、ネットカフェに入っていくメガネをかけた双葉を見つける。そこで双葉が思春期症候群を発症して二人に分裂していて自宅で暮らせない方の双葉はネットカフェで寝泊まりしているという。事情を知った咲太は解決するまで一方の双葉を自宅に泊めることにする。
原因を探るうちに一方の双葉がSNSに自分のちょっとエッチな写真をアップしていること、そしてもう一方の双葉はその行為に嫌悪感を覚えやめさせようとしていることを知る。
それぞれの双葉に事情を聞くうちに、友人の少ない双葉が仲の良い咲太や国見(双葉が思いを寄せている)が彼女を作ったことで孤独になる恐怖をおぼえ、誰かに構ってほしいとの思いからSNSに投稿を始めたようだ。そんな自分に強く嫌悪したため存在自体が分裂してしまったのだった。
一つの世界に同一人物が二人存在することはできないが、二人同時に認識されない限り二人同時に存在していることにはならいが、二人が会ってしまうとどちらかが消えるしかない。それを避けるためには、お互いが受けいれ統合された存在に戻るしかないのであるが、一方の双葉は自分が消えると姿を消すのであった。
二学期の初日、咲太はマンションの前で麻衣と出会うがどうも様子がおかしい。遅れて出てきた妹(母が違う)の豊浜のどかが私が麻衣だという。昨晩のどかが麻衣のマンションに泊まり朝起きると二人の姿が入れ替わっていたらしい。
姉妹喧嘩の末のどかの姿をした麻衣が咲太のマンションで同居することになり、麻衣の姿をしたのどかのフォローのため一緒に通学することになる。
売れないアイドルグループに所属するのどかとトップ女優の麻衣。二人の母どおしの確執によるプレッシャーと姉のようになりたいと望むのどかの思いが思春期症候群を発症させた結果の現象であった。
のどかは麻衣として仕事をこなすうちに、麻衣のひたむきな努力を知り自分との実力の差を理解し、自分は麻衣にはなれないことを思い知る。
お兄ちゃんの咲太以外の人とはうまくコミュニケーションを取ることができない引きこもりの妹・かえでは、兄が連れてくる麻衣ほか少女たちとの関わりの影響か引きこもりと不登校を解消したいと「今年の目標」を咲太に見せ、外出や電話に出る練習を始める。
一ヶ月後には、麻衣やのどかと海岸まででかけピクニックができるまでになっていた。そこで偶然以前の同級生鹿野琴美に出会い、かえでが解離性障害と思春期症候群を発症していて、かえでは梓川花楓とは別の人格で花楓の記憶は全くもっていないことが麻衣達に明かされる。
咲太は麻衣たちに花楓を救えなかったことを悔やむ咲太にも思春期症候群が発症し胸の傷が現れ、海岸で出会った翔子さんの言葉に救われ今の自分があること、そして花楓に「かえで」として自分の人生を生きることを提案するきっかけとなったことを語る。
「かえで」の病気が治るということは、「花楓」に戻るということであり、今のマンションで生活をともにしてきた「かえで」の消滅を意味するのである。咲太は「かえで」が順調に病気を克服している姿に喜びながらも「かえで」が消滅する時が近づいていることに恐怖を覚えていた。上野動物園でパンダ見た後、夜の学校にも行くことができてかえでは目標を達成する。それは「かえで」が「花楓」に戻るきっかけとなることでもあった。
ここまでがTVアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」のエピソード。
麻衣がロケの合間を縫って咲太の家へ行くと「翔子さん」が居候していることが発覚、麻衣は咲太に冷たい態度をとりロケ地の金沢に帰ってしまう。翌日、その日が麻衣の誕生日だということを後から知った咲太は新幹線で金沢までお祝いに駆けつける。(この部分は、アニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」でのエンディングエピソードとして盛り込まれている。)
「翔子さん」と同居しているうちに咲太の胸の傷から出血し思春期症候群が悪化する。そのことから、心臓病で闘病中の「翔子ちゃん」と大学生になった「翔子さん」が同一人物で、咲太の心臓を移植して生き延びた「翔子ちゃん」の未来の姿が「翔子さん」であることに気づく。
翔子さんは、咲太に12月24日麻衣とのデート先に向かう途中事故に巻き込まれ死ぬ運命にあることを告げ、事故に合わないよう行動することを警告するために未来からやって来た存在であった。
翔子ちゃんを助けるための死か、麻衣との未来かの選択を迫られる咲太は24日翔子さんとの約束の場所に向かう。翔子ちゃんを助ける行動に出るだろうと考えた翔子さんは事故に合わない場所を指定していたが途中でその事に気づいた咲太は、事故の場所に向かい走り出す。結果、事故に会う直前、麻衣が咲太を突き飛ばすことで身代わりとなる。麻衣を失った咲太は絶望に打ちひしがれる。
麻衣の葬儀にも出ず抜け殻のようになった咲太の前に「翔子さん」が現れる。麻衣の心臓を移植され成長した「翔子ちゃん」であった。「翔子さん」の手助けにより事故当日に戻った咲太は、朋恵の認識によって自由に行動できるようになり麻衣に会いに行く。
自分の命をかけても咲太を助けると覚悟を決めていた麻衣を説得し、自分は事故現場に出向きうさぎの着ぐるみの姿で事故に合う咲太を突き飛ばすことで事故を回避する。
その結果、危篤状態の「翔子ちゃん」にはドナーが現れることはなかった。咲太の麻衣は、なんとかして「翔子ちゃん」を助けたいと強い思いを持つのであった。そして時間は巻き戻り三年前の小学4年生の翔子ちゃんが未来の自分についての課題に取り組むところから時が動き出し・・・
ここまでの2巻が映画「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」のエピソード。
過去の記憶がもどった花楓は、不登校を克服するため保管室に登校することから始めていた。そして兄と同じ峰ヶ丘高校に通いたいと言い出す。不登校克服途中の花楓は入試の途中でストレスから体調を崩し試験を受けられなくなる。咲太は落ち込む花楓に峰ヶ丘高校に拘る必要はないと諭すのであった。のどかからスウィートバレットのメンバー広川卯月が通信制高校に通っていることを知り、花楓とあってもらえるようセッティングしてもらう。
卯月から不登校の経験や通信制高校のことを聴いた花楓は自分の行きたい学校は自分の意志で決めることが大切であることを理解する。そして・・・
咲太が花楓とふたりで生活する上で母のことを考えないようにしていたことが原因で発症した思春期症候群によって、麻衣のようにまわりから認識されなくなる現象に見舞われる。
そして、咲太を認識できるランドセルを背負った麻衣そっくりの少女と出会い、少女に導かれ咲太にとって絵に描いたような理想の世界に導かれる。その世界は思春期症候群のない家族・友人・恋人それぞれの関係がすこぶる良好で満たされた世界ではあったが「居心地がよすぎる」と、元の世界に戻る決心をする。
再び少女に導かれ元の世界に戻った咲太は、いぜん誰からも認識されない状態であったが麻衣にはみつけてもらえ、麻衣から励まされ母に会いに行くことにする。母と向き合う決心をし母に向き合った咲太に母が気づき、みんなに認識されるようになった。
そして時が経ち無事大学に進学した咲太は、そこで中学校の同級生だった赤城郁実と再会する。
「【映画】青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」の記事でも書きましたが、よくできたエンタメ小説で個人的には高評価の作品です。ただ私としては「青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない」できれいに完結させておくのが良かったのではなんて思ってしまいます。
人気シリーズなのでそう簡単に完結できない事情もわかりますし、まだ描ききれていないエピソードがあることも理解できます。しかしこれ以上ストーリーを続けると「ランドセルガール」のように前のをちょっと焼き直した思春期症候群のエピソードが繰り返されるような気がしてならないのです。
それに、大学生になっても思春期ってて感じもあったり。
いずれにしても、まだまだ終わりそうにないので私達読者をがっかりさせないようなあっと驚く展開を期待しておくことにしましょう。
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