1997年の『ボーン・コレクター』から始まる〜リンカーン ライム〜シリーズ11番目の作品で、2016年「このミステリーがすごい!」第1位に選出されています。7作目の「ウォッチ・メイカー」で1位を獲得し、11作目でも1位を獲得とはジェフリー ディーバーの底知れない才能に驚かされます。
私は、「ウォッチ・メイカー」ともう1作ほどしか読んでいなかったので〜リンカーン ライム〜シリーズを読むのは多分3作目です。ちなみに『ボーン・コレクター』は映画で見ました。
科学捜査官リンカーン・ライムは、犯罪の天才ウォッチメイカーが獄中で死亡したとの報を受けた。その直後、新たな難事件がもちこまれる―腹部に謎めいた文字を彫られた女性の死体が発見された。犯人はインクの代わりに毒物で刺青を刻み、被害者を毒殺したのだ。現場で発見できた証拠物件はごくわずかだったが、犯人が残した紙片はニューヨークで起きたある連続殺人に関する書籍の切れ端だった―ライムが解決した“ボーン・コレクター”事件である。犯人はボーン・コレクターの手口とライムの捜査術に学び、殺人をくりかえしているのか?次の犯行はどこで起きるのか?被害者に彫られた文字は何を意味する?スキン・コレクターの真の狙いはいったい何か?すべてを解くカギは証拠の中に!“ドンデン返しの魔術師”ディーヴァーが放つ会心作。緻密な伏線と手がかりから、二重三重に擬装された衝撃の完全犯罪が浮かび上がる!
amazon より
ネタバレあり注意
冒頭で「ウォッチ・メイカー」の獄中死が描かれ、「ボーン・コレクター」の模倣と思われる犯罪が発生する。「スキン・コレクター」と言うタイトルから「ボーン・コレクター」のような猟奇犯罪は想像していたが、「ウォッチ・メイカー」まで登場させ、更に獄中死したとはと驚かされます。
今回は、ニューヨークの古い地下道で芸術的技術のタトゥーを毒で刻み殺害するという連続犯を追うストーリーなのですが、犯人はリンカーン・ライムの捜査手法を徹底的に研究し微細な証拠一つ残さないという知能犯で「ボーン・コレクター」を模倣しているような節が見受けられるのです。
「スキン・コレクター」が残すタトゥーは、“the second”から始まり、その後“forty”、“17th”、“the six hundredth”と続き、犯人からの犯行声明と思われるがなかなか関連性が判明しない。このあたりは、犯行現場の詳細な図面表記と合わせてまさに本格推理ものの体です。
これらはライムの思考の過程をトレースしていくための重要なヒントであり、また犯人がライムにミスリードさせるための伏線であったりします。
犯罪の本質から全く関係のないようなサックスと彼女の娘同様のパムとの確執が描かれ二人の関係性にハラハラさせられたりするのですが、それが最後にはあっと驚かされる展開に発展するのです。
ストーリはどんでん返しに次ぐどんでん返しで猟奇犯罪と思われていたものが、大規模テロ計画になり、ボーン・コレクター事件にからむカルト集団の執着もからみ、最終的に緻密な犯罪を計画し糸を引いていた黒幕は「ウォッチ・メイカー」だったという落ちに行き着きます。
「ウォッチ・メイカー」を継ぐ猟奇連続犯の登場かと思わせながら、実は「ウォッチ・メイカー」の手綱の上で踊っていたテロリストでしかなかったということで、リンカーン・ライムに対する「ウォッチ・メイカー」自身の再始動を宣言する宣戦布告的な事件と位置づけられるでしょう。近い内に「ウォッチ・メイカー」対ライムの直接対決が読めるかもですね。
細かい内容は忘れましたが「ウォッチ・メイカー」を読んだときほどには盛り上がれなかったような気がします。でも、急展開を繰り返す物語をこれほどきれいにまとめ上げ楽しく読み切らせる構成力はさすがとしか言いようがありません。