「悪いうさぎ」の読後から約1年。やっと2作目の長編「さよならの手口」に取り掛かることができました。2020年1月から「世界で最も不運な探偵 ハムラアキラ」のタイトルでドラマ化されていたのですね。気が付かなかったのですがたまたま「悪いうさぎ Y」だけ観ることができました。
葉村晶役がシシド・カフカは悪くない。でも「MURDER BEAR BOOKSHOP」で探偵をしている設定になってたりしてちょっと違和感・・・ながら、富山泰之(ミステリー専門古書店MURDER BEAR BOOKSHOP店長)役が中村梅雀なのはなんとなく納得です。
この作品は「悪いうさぎ」から13年を経て発表されたということで、主人公の葉村晶も同じ程度に年をとっていてアラフォーになっているんですね。
仕事はできるが運の悪い女探偵・葉村晶が帰ってきた!
探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優に二十年前に家出した娘探しを依頼される。当時娘を調査した探偵は失踪していた――。
探偵を休業し、ミステリ専門店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉でバイト中の葉村晶は、ある家からの古本引き取りを頼まれる。ほとんどあばらやのようなその家で、大量の本と格闘したが床が抜けてしまい、床下に落ちた葉村は怪我を負うと同時に、白骨死体を見つけてしまう。入院先で刑事に事情を聞かれた葉村は、ある事実を指摘。それが骨の身元判明につながり、事件は解決したのだが、話を聞いていた同室の入院患者で元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を頼まれ、引き受ける。
一方、やめるつもりだったミステリ書店のバイトも続けるはめになったのだが、そこで女性客の倉嶋舞美と親しくなる。しかし、彼女は警察の監視下にあり、葉村は担当の警察官・当麻から舞美に対するスパイの役割をしろと強要されるのだった……。amazon より
「悪いうさぎ」の事件から10年ほどが経ち葉村晶も四十をすぎる年齢になっていた。(シリーズの今後の辻褄あわせのためか年齢の詳細はふせられている)前の探偵事務所は所長の引退で廃業となり、探偵休業中の葉村晶に声をかけたのがミステリ専門店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉を開業した旧知の富山で、古本屋の手伝いを始めて半年が経とうとしていた。住まいも女性ばかりのシェアーハウスに移り相変わらず気ままなシングルライフを送っている。
〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉の仕事で古本回収に訪れたボロ屋で物語開始早々に不運な事故に巻き込まれる。押入れの床が抜け大量の本の下敷きになり、下水が漏れ悪臭の漂う床下に頭から突っ込み、床下に遺棄されていた髑髏とゴッツンコするという無残。骨折・打撲・大量のカビを吸い込み肺が真っ白と満身創痍の状態で入院することに。
入院の病室でたまたま同じ部屋であった往年の大女優・芦原吹雪は、床下髑髏のなぞを言い当てた刑事との会話を聞きつけ優秀な探偵であると知り、晶に調査を依頼する。それは20年前に失踪した娘を探してほしいという厄介なものであった。吹雪は余命幾ばくもなく最後にひと目でも娘に会いたいという。
調査を引き受けた晶は、20年前にも調査依頼をしたという当時の報告書を洗い直すことから調査を始める。すると20年前に調査を受けた探偵が調査終了後に失踪していた。調査をすすめると所在の確認できない関係者が複数いることが判明するのであった・・・
今回も「悪いうさぎ」以上の不運が葉村晶を襲います。出だしから下水の漏れた悪臭満ちる床下に本の下敷きになりながら頭から突っ込むというエグさ。さらに白骨死体の骸骨に頭をぶつけ、更に崩壊した押入れに充満したカビの胞子を大量に吸い込み肺が真っ白とい想像するだけで悍しすぎる展開です。
さらに、大家の住む母屋の倒壊に巻き込まれ再度の入院。住み慣れたシェアーハウスを追い出されかけたり、失踪した探偵の妻から調査のついでに探してくれと泣きつかれたり、晶に近づいてきた舞美の行動を見張れと探偵契約を立てに警察に脅されたり、列車で襲われたりとつぎつぎと不運に見舞われるのです。
心身ともに満身創痍になりながらも自分を見失わず信念を曲げることなく探偵業を全うしようとする葉村晶がなかなかに格好いいしハードボイルドしているのです。13年ぶりの新作ということで、10歳ほど歳を重ねながらも変わらない葉村晶でした。
ストーリーも良く練られていて、20年も前の失踪人の調査とういたやすくに解決しそうにない依頼から複数の行方不明者が判明し、隠されていた連続殺人犯の存在が浮き彫りになっていくという流れは見事で晶の調査が進むに連れて深まるなぞとふりかかる不運にワクワクさせられ物語に引き込まれます。「悪いうさぎ」同様に本筋からは外れながら違法賭博や詐欺、床下の白骨死体など晶の不運を象徴するお話が進むのもなかなかおもしろいのです。
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