海外のクリエーターが日本をテーマにしたコンテンツを手掛けた場合「なにか違う」と感じる部分が多々あったりするのですが、Ghost of Tsushima については、全くそのように感じることはありません。ゲームの根底に流れる和の精神性は日本人にも全く違和感を抱かせない物となっています。
オープンワールドの刀による剣撃ゲームとしては、過去最高と言っても過言ではない出来上がりでブレイクスルーを感じさせられる今後の試金石となる作品と言えるでしょう。
鎌倉時代の大事件である蒙古襲来(元寇)をテーマにした物語で、タイトルの通り舞台は対馬です。
蒙古による日本侵攻の足がかりとして対馬に上陸してきます。蒙古兵の容赦ない猛攻により対馬の武士団は壊滅的な被害を受け、対馬の占領を許してしまうのでした。最前線で戦いながら奇跡的に生き延びた武士・境井 仁(さかい じん)は、対馬の土地をを取り返しそこに住む民を守ろうと決意するのです。
冷酷にして狡猾な智将、コトゥン・ハーンの兵略に対して正々堂々を是とする武士道で真正から戦ったのでは勝機はないと痛感した境井仁は、たとえ侍の道に反した戦い方に手を染めることになっても冥府から蘇った者「冥人(くろうど)」として、あらゆる手段を使って故郷を敵の手から取り戻す戦いに挑むのです。
ゲームの基本的な流れは、冥人となった境井仁として蒙古軍が占領する土地や城に駐在している蒙古兵を殲滅して開放し占領地域を減らし最終的には敵将コトゥン・ハーンの首を打ち取るのです。
このゲームの運び方は、FarCry(ファークライ)シリーズに似ていると思いました。拠点を攻略するとそこに住人が住み着きはじめ新たな村ができそれが増えて地域が開放され、最終的にボスを仕留める。オープンワールドゲームというシステムから必然的に似てくるものではあります。
基本の武器は、刀と短刀です。補助武器(装備品)として弓・クナイ・吹き矢・爆弾などがストーリーを進めるうちに使えるようになります。御札も順次手にはいり刀にセットすることで性能アップを図ることができるようになります。
防具は、着物と鎧で色んな種類が次第に手に入り戦い方によって適切な防具を選べるようになります。
武士としての技に守りと攻めがあり刀を使った正攻法の剣技で、拠点を攻略するなどで得られるポイントを使って開放していきます。これによって戦い方の幅が広がっていきます。
型も武士としての正攻法のスキルで、石・水・風・月の4種類の方があり、それぞれ剣兵・盾兵・槍兵・剛兵に対応できる型になり対する兵種によって型を変更することにより戦いやすくなります。
冥人は、武士としての誉を捨てることによって使えるようになるスキルです。冥人の噂を広げることで入るポイントを使って手に入れる冥人の暗具と仁之道で手に入るポイントで得られる兵術があります。暗具にはクナイや煙玉・てつはうなどの忍者が使うような補助武器があります。兵術には、回復・一騎討・弓術・闇討ちなどがあります。
気力量は、画面左下に黄色い丸で表示されます。体力量は、その下部の赤い棒で表示されます。いずれも敵の攻撃をもらうと減少していき体力がなくなると死亡します。体力が少なくなると気力を使うことで体力を回復することがでるのです。
気力は、各地に点在する稽古台で竹を切ることで最大量を増やすことができます。体力は、各地に点在する温泉を見つけて入ることで最大量を増やせます。
回復手段は、色々ありある御札をセットすることで自動回復したり、一騎討や受け流しを成功させると気力回復したりとストーリを進めるにつれてその手段も増えていきます。また、気力消費による強力攻撃発動などもできるようになります。
武士として、守りと攻めもスキルを磨き型を極め刀による剣撃で正面から打ち合う正攻法が一つ。この場合、大勢の敵に一度に襲いかかられることを覚悟する必要があります。もう一つが冥人として、背部や上部から忍び寄り闇討ちをしたり、吹き矢で敵を惑わせ同士討ちをさせたり、毒で葬ったりと武人にあるまじき忍者のような戦法で戦う方法です。
どちらの戦法で挑むかはプレイヤー次第です。ただし正攻法だけではしのぎ切るのは難しいように思います。冥人プレイを続けると天候が悪くなり雷が鳴り出すとか・・・武士である境井仁が武士の誉をすて冥人となることへの葛藤や家族であり武士の誉を重んじる領主志村との確執がストーリーの根底に流れる重要なファクターになっているのです。
探索や収集要素も充実しています。フィールドをくまなく歩き回り、温泉に浸かり神社に参り和歌を詠む。兵装や素材を集めて装備を強化する。色々やることがあるのです。秘湯や稽古台などの近くを訪れると黄金色の導き鳥がその場所まで誘導してくれます。狐は、稲荷の祠まで案内してくれます。
狐は撫でてやると飛び回り愛嬌を振りまいてくれる癒やし系です。
フィールドの作り込みが半端なく素晴らしいです。一面に広がる銀色のススキや真っ赤な彼岸花・黄色いイチョウの落ち葉。など印象的なビジュアルが目を引きます。水や風や雲の流れが自然で日本の侘び寂びを強く感じさせられるデザインになっています。城や寺院や村の民家など細かな作り込みがされていて全く違和感を感じることはありません。この普通に日本らしいフィールドを本当に海外のクリエイターが作ったのかと驚かされます。
ストーリー、アクション、ビジュアルとすべてにおいてバランスの良い完成されたゲームといえる作品です。現時点では間違いなく今年一番おすすめ作品です。参考までに私の場合はプレイ時間70時間程度でエンディングを迎えました。
主人公の境井仁と彼に関わる登場人物の物語が重層的に絡まりながらストーリが進み、しっかりと練り上げられた物語は最後まで飽きさせられることはありません。剣撃ありステルスあり、近接攻撃あり遠距離攻撃ありと幅広い戦闘で自分にあったプレイスタイルでアクションを楽しむことができます。美しいフィールドは圧巻でそこを馬で駆け回り探索する楽しみもたくさん用意されています。
一つ苦言を上げるとするなら、周回プレイ要素がないことでしょうか。エンディングを迎えるとそのままフィルド探索を継続できる仕様で蒙古兵の残党狩りをしたり未探索の場所を訪れたり引き続き対馬を駆け回れるのですが、2周目を遊ぼうとすると普通にNEWGAMEから始めるだけのようなのです。この辺りは今後のアップデートに期待です。