オープンワールドは、ビッグタイトルでは主流のシステムになってきています。最近では「ホライゾン・ゼロ・ドーン」を楽しみましたし、ファークライ・グランドセフトオート・アサシンクリード・ウォッチャー・ダイイングライトなどなど名作タイトルの多くはオープンワールドを採用しています。
そのオープンワールドの現時点での完成形を提示したのが「スカイリム」であるといえるでしょう。スカイリムの前にもオブリビオンやレッド・デッド・リデンプションなどのタイトルもいろいろあるのですが、壮大なストーリーと圧倒的なボリューム、複雑に入り組んだクエスト、それに美しく表現されたフィールドを駆け回る楽しさ、緻密な作り込みでそれまでにないゲーム体験を示してくれました。(その複雑さゆえバグも多く批判も多い作品ですが)
スカイリム以降オープンワールドゲームはどんどん進化して、ビジュアル・システム・ストーリーなど工夫をこらした楽しい作品が沢山生み出されてきました。でもその原点とも言えるスカイリムを初めて体験した時の感動を超える感動を与えれくれる作品にであえたとは言えません。当然ゲーム性は数年前のスカイリムを遥かに超える体験を与えてくれるものでストーリーも色々と凝らされているゲームばかりです。でも、スカイリムのプレイ感と世界観を超えて新しい感動を与えれくれる程のものではないのです。
さらに、名作と言われるオープンワールドゲームは海外メーカーのものばかり・・・日本のメーカーはこの分野において海外に大きく水を開けられた感があり、技術的にも資金的にも日本メーカーが海外メーカーに対抗できるビッグタイトルを開発するのはもう無理なのではないかとなどとも思ってもいました。
ところが・・・ところがです。
任天堂が「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」であっさりとやってのけてしまいました。
まさか日本メーカーが「スカイリム」を超えるゲーム体験を与えてくれるオープンワールドゲームを作り上げるなんて夢にも思っていませんでした。でも「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をプレイしてみて任天堂だからこそ作ることができたゲームなんだと納得させれました。
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」では、オープンエアーと名付けられ、やりたいことがほとんどなんでもできてしまうゲームと位置づけられています。まさにこのコンセプトこそが今までにない新体験のゲーム性を生み出す源泉であるといえるのでしょう。
ついつい「スカイリム」とくらべてしまうのですが・・・スカイリムは性別人種職業能力などさまざまな組み合わせが選択できて、ストーリー分岐も多岐にわたってかなり複雑な世界観を持ったゲームといえます。対してゼルダは至ってシンプルな世界観です。
主人公のリンクを操り、ストーリーはガノン討伐、ステータスアップは体力とがんばりに祠を探索して得られる証を割り当てるだけ。魔法とかステルスとか特別なステータスはありません。それを補うのが、防具・武器・盾などの装備の特殊効果になっています。武器には、火や雷・氷などの特殊効果の付いている剣や槍や矢があり、防具には、暑さ寒さを和らげたり、滝を登ったり、雷を防いだり、移動音が静かになったりの特殊効果がついていたりします。他には、素材を集めて料理をすることによって特殊効果のある食品や薬が作れるのです。
ガノン討伐は、プレイヤーが討伐可能と判断できればいつでも討伐に向かえます。ただそれなりに装備や協力者などの環境を揃えないと討伐は難しいでしょう。
このゲームの一番の特徴は、フィールドの探索が楽しいこと。
草原・砂漠・海岸・火山・雪山・森林・泥沼・湖・・・様々なフィールドに天候や気温の変化。岩を砕き、氷の塊を溶かし、雪玉を転がす。草原に火を放ち、風に乗り空を飛ぶ。馬や鹿に乗り、イノシシや狼を狩る。トンボやちょう、トカゲやカエルを捕まえ、リンゴやきのこを採取する。
採取した素材は、売ったり調理したり武器の素材になったり・・・
山に登り、川を泳ぎ、滝を登り、空を飛ぶ。おそらく見えているところで行けないところはないのではないでしょうか。当然、体力やがんばりのステータスが低い初めのうちは行動範囲は限られるのですが、装備が揃いステータスが上がってくると自由自在にフィールドを駆け回れます。それに、あの山のてっぺんに行きたいと思い頑張って到達すると、何かしらのご褒美があったりします。それは宝箱であったり、コログの実であったり、祠であったり・・・
また、武器や盾がすぐに壊れてしまうので、その調達のため戦闘や探索をするモチベーションにつながっていたりします。
ステータスアップは、祠の攻略だけ。祠を攻略すると克服の証がもらえ、4つ女神様にお供えすると1ポイント体力かがんばりをアップできる。祠の攻略は、ほとんどが戦闘能力は全く必要ないアクションパズルで、中にはガーディアンとの戦闘だけの祠があったりするが、勝てなければ後回しにすれば良い。とはいっても工夫をこらせば勝つのが難しい敵は少ない。
フィールドには様々な敵が配置されていて、移動しているだけで不意に襲われたりもするがあえて戦わずに逃げることもできる。なので、対戦が苦手な方は、あえて敵と戦わなくても(一部の敵とは戦わないわけにはいけないが)ゲームの進行に支障はないと言えるでしょう。敵と戦うことのメリットは、武器や盾やお宝、素材が手に入ることと戦闘に慣れること。でも戦闘になれる以外は、ミニゲームやフィールドの散策、サイドクエストをこなすことで補うことができる。
最終的にエンディングをむかえるには、ガノン討伐が必要なのですが、いつガノン討伐に向かうかは人それぞれで、そのに向かう道のりも人それぞれ。がんがん敵を倒すのを楽しんでもよし、素材を集めて料理を楽しむのもよし、サイドクエストをこなすのもよし、狩りを楽しむのもよし、詩の謎を解くのもよし・・・祠の攻略さえ着実に勧めていれば他はそれぞれ自由に楽しめるギミックがそこかしこにひそんでいるのです。
祠さえ攻略していけばステータスは自然と上がっていくのでそこそこステータスが上がれば、あとは研究所で古代装備を揃えれば、ガノン討伐はそれほど難しくはありません。そこに至る道程は人それぞれに楽しみ方がある。これほどシンプルながら奥の深いゲームはいままでなかったでしょう。
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のすごいところは、人それぞれの切り口で楽しめること。だからこのゲームは誰にでも自信を持っておすすめできるのです。子供から大人まで、ゲーマーからゲームをしたことがない人まで。こんな楽しいゲームがあるんだよと紹介したくなるゲームです。
それから、ほとんどバグがない。こんなオープンワールドゲームは初めてです。
任天堂の底力を見せつけられました。
Nintendo Switch これからも期待大です。