新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 支倉凍砂 電子書籍

まさか、「狼と香辛料」の続編が出るとは・・・

思いもつかなかったサプライズですね。ライトノベルという分野で初めて読んだ完結した作品で、17巻一気読みした大好きな作品です。

ファンタジーながらライトノベルらしくない地味で落ち着いた世界観で、魔法が飛び交い剣戟で戦うなどといった派手なアクションは一切ありません。主に商品の売買や先物などの相場取引で知恵を戦わす心理戦です。でも、お金の絡んだ戦いなのでハッタリや騙し、暴力、政治力など様々な要因が複雑に絡み合い、悲喜こもごもな物語が紡がれます。そこには、ファンタジー的要素は全くと言ってないのですが、舞台となる中世ヨーローッパ的世界は、神話として千年以上語り継がれる精霊と呼ばれるような動物の化身たちが人目につかずほそぼそと存在するというファンタジーな世界なのです。

主人公で行商人のロレンスの相棒であるホロは、賢狼とよばれる狼の化身なのですが、ある時からとある地方で長年麦に宿る豊穣の神として祀られていました。行商で通りかかったロレンスの荷馬車に紛れ、故郷に帰りたいという思いから神としての務めを放棄して少女の姿でロレンスと共に旅をすることになります。

ホロの故郷の情報を求め、様々な国や地方を旅しながら、商人として成長していくロレンス。賢狼としての知恵と能力でロレンスを助けるホロ。様々なエピソードが紡がれながら物語は進んでいきますが、本質は知恵深く老練ながら少女の姿であるホロに実直で不器用でウブなロレンスが翻弄されながら、助け合い愛情を深めていく2人の絆の物語なのです。

最終的には、ロレンスは高級温泉地の温泉宿の主人として落ち着き、親子3人で幸せに暮らしましたとさ・・・で、物語は完結します。

そして、今回始まったのが「狼と羊皮紙」

「狼と香辛料」の物語の約10年後の世界。
ロレンスの弟子で子供のようなコルとホロとロレンスの娘ミューリの物語。

温泉宿に湯治に来るとある国の王族に請われ旅に出るコル。教会の無謀な重税に対抗し正すべく聖典の現代語翻訳の監修を託されてのことであった。コルとは兄妹のように育ちコルを慕うミューリは、樽に隠れてコルの旅立つ船に乗り込み二人の旅が始まる。ロレンスには内緒のようだが、ホロには狼の姿に変身する術を教え込まれ、コルを助けるように託されてるらしい。

20歳ほどに成長したコルは、聖職を目指し知識を深め、節制を重ね、実直で堅物な青年となっている。ミューリによると、世の中の半分の半分、1/4しか見えていないという。聖職者を目指すものとしての節制から女性については全く理解できておらず1/2、純粋な聖職者としての実直さから世の中の裏表の裏側が見えておらず1/2、で1/4らしい。

ミューリは、約10歳ながら賢狼ホロの娘としての知恵と大胆な行動力と高い身体的能力を持っている。老獪さをなくしたミニホロって感じながら、世間のことは全く理解していない、初めて体験することばかりの初々しさ。

「狼と香辛料」の香辛料は、高価な商品で価値や貨幣を象徴していたのですが、「狼と羊皮紙」の羊皮紙は、聖典などを記する書としての羊皮紙で聖典や宗教を象徴しているようですね。

なので、今回のテーマは宗教。

まだ、始まったばかりなのでどんな展開になるのかはわかりませんが、出だしから不当な重税を課す教会とそれに対抗すべく新たな教会の設立を目指すとある王国の戦いの前哨戦にコルとミューリが巻き込まれていくお話です。純粋な気持ちから、経典の教えを民衆に広めるべく、現代語翻訳を請け負うコル。王国はそれを新経典として自国での新たな教会の設立を企む。教会は、それを阻止すべく異端として排除しようと画策する。

同じ世界の約10年後の物語なので、コルがロレンスやホロと旅したときに出会った人々もおそらく絡んで来るだろうし、ホロやロレンスも登場する機会があるのかも。まさに「狼と香辛料」の旅の世界を引き継ぐ物語で、またあの世界の物語にふれられるという期待に胸が躍る感じです。