楽天が「楽天EXPO2018」で示した今後の方針について思うこと

「楽天EXPO2018」で発表した大胆な今後の方針については、出店者に大きな波紋を起こしています。多くの出店者はこの方針に反発する態度を示しているようです。

「楽天EXPO2018」で発表された主な内容は

「商品画像登録ガイドライン制定」
「ワンデリバリー」
「R-mail(全配信の形式)からR-Message(シナリオ形式)への移行」
「チャット機能の導入」
「アフィリエイト料率の変更」

と言ったところです。

どうして反発を招いているのかというと、どれも出店者にとって負担が増加する内容だからでしょう。特に商品点数が多く売上が上位を占めるような店舗にとっては結構な負担増が予想されます。

一つずつ簡単に確認していきましょう。

「楽天EXPO2018」で示された今後の方針

商品画像登録ガイドライン制定

一枚目画像を全商品統一基準に則った画像に変更する。

[1]テキスト要素占有率
商品画像内に配置するテキスト要素の占有率は20%以下としてください。

[2]枠線
枠線なしの商品画像を登録してください。枠線とは画像の4辺を囲う線のほか、L字・帯状などの要素を含みます。
辺の太さに依らず、枠線の使用は不可といたします。

[3]背景
商品画像の背景は、写真背景か単色白背景のみを使用してください。

という内容です。

店舗によっては全商品の写真を撮り直し白抜き加工をする必要が生じ、手間とコストのかかる作業を強いることになります。対応しないと10月以降はペナルティの対象となり商品の販売に直結する重大な課題となっています。また楽天の独自色である店舗の個性を活かした販売方法が薄れ結果販売減につながるのではとの懸念が示されています。

ワンデリバリー

購買データに加え、配送データも管理することで商品の注文から配送までの仕組みを楽天内で統一化するよう整備。受け取りの利便性向上、再配達削減、配送状況の可視化などの実現をめざす方針である。要は、楽天独自の配送網を整備して出店者に格安かつスムーズな商品配送システムを提供するということ。楽天に出店している店舗の商品配送はすべて楽天に任せなさい!(ゆうパック・ヤマト・佐川などの大手配送会社は使う必要はない)との強い意志表示を感じます。

楽天が示すメリット

消費者

  • 深夜や早朝の商品お届け
  • 当日配送(一部地域)
  • 複数店舗でまとめ買いした商品を一度にまとめて配送

店舗

  • ボリュームディスカウントによる魅力的な配送料金
  • 大規模な倉庫自動化機器による効率的な倉庫運営
  • 配送サービス向上による流通拡大

楽天はゆうパックと提携して「特別運賃プログラム」という一般より安い設定の運賃を出店者に提供していたのだが、9月より値上げとなり一般の取扱と変わらない設定になりハッキリ言って意味のないプログラムになってしまったのです。おそらく三木谷社長はゆうパックの楽天軽視の姿勢に激怒されたのでしょうね。独自配送システムは当然今後の課題として検討されていたでしょうが、一気に最重要課題に浮上したのではないかと考えています。

これについては、おおまかな方針が示されただけで説明の限りでは店舗にとってはメリットしかないのですが、数年前にも独自配送システムの構想を打ち出しながらも頓挫しており、構想通りに実現可能なのかは疑問の残るところです。楽天の全物流を一手に引き受けられるような配送システム自体が現時点で存在せずほぼゼロから数年で実現できるのか・・・・・?(大手宅配業者が物流量の増加と人員確保で四苦八苦しているというのにです。)

R-Message(シナリオ形式)への移行

メールに関してリアクションがある消費者に配信を絞り込みより効果的メール運用を目指す。今後は「R-mail」は縮小しシナリオ形式で配信する「R-Message」に移行していく。

シナリオ形式のメールというものがどんなものなのかがいまいちつかみにくく、店舗のメール配信にどういった変化がもたらされるのか今のところよくわかりませんが、1クリックあたり100円など経費負担の増加は確実です。(効果が伴えばいいのですが・・・?)

チャット機能の導入

店舗スタッフと消費者がチャットできる機能。2017年から試験的に運用を始めた「チャット機能」は、これまで約100店舗が試験導入され、転換率が14.8ポイント向上、平均注文額は未利用者比135.5%。流通効果は楽天の試算で0.41%増とのことです。

9月下旬から全店導入で、月額固定料金で3千円〜5千円。従量課金が100会話以上で10円/1会話。1会話とは一言(一行)のやり取りなのか一つの質問に対する全やり取りなのか?によって負担がかなり代わってきますね。いずれにしても一般店舗なら5千円/月、年間6万円の負担増です。さらにチャットはいつ問い合わせがあるかわからないのでパソコンの前に常駐するスタッフが必要になります。

アフィリエイト料率の変更

両立設定は、店舗が所属するジャンルから登録した商品カテゴリごとに変更となる。アフィリエイトの発生報酬に関する計測期間は従来の30日間から24時間に短縮。最低負担料率もファッションでは1%から8%と大幅負担増となる。説明では期間短縮により料率アップ分が相殺され負担はそう変わらないとのことなのですが・・・?

まとめ

まとめと言うか、私の思うところなのですが・・・

楽天ペイの決済方法の統一化に始まり、画像の統一化、デリバリーの統一化、チャット導入による問い合わせ機能の統一化。店舗独自の個性で売るのではなく、できる限り検索・販売・カート・配送のシステムを統一化して顧客目線で楽天という大くくりのショッピングサイトでの購入体験の画一化を目指しているのが見て取れます。楽天に出店しているこの店で買ったという認識でなく楽天という店で買ったという認識を購入者に植え付けていきたい。それによって楽天ブランドを高められしいては出店店舗のメリット(売上アップ)につながっていくという考えなのでしょう。

端的に言えばよく言われていることですが、Amazon化ですね。

当初、楽天市場と名乗っていたとおり各店舗が個性を競いあう雑多なマーケットとして楽天が提供する市場にみんなが集いワイワイがやがやと集まってきて、個性的な店主と客がふれあいながら商売をしている。そんな感じのコンセプトで楽天市場は運営されていたはずです。しかし規模が大きくなり店が増え商品が増え客はどこにどの店があって希望の商品を購入するのにどこに買いに行けばいいのか市場の中で迷うようになってきたのです。

そんな中、台頭してきたのがメガスーパーマーケットのAmazonです。スマートに陳列された商品は探しやすく値段も安い。プライム会員という会員超優遇システムで的確に囲い込みをして、ビッグデータ分析を取り入れ顧客の購買行動に基づいたデータをいち早く販売戦略にフィードバックし、売上をどんどん伸ばしていったのです。

楽天も楽天カードとポイントシステムを活用して顧客を囲い込み、ビッグデータ分析も当然取り入れた販売戦略をとっています。しかしAmazonというワンショップとは違い、様々な個性のより集まりである市場ではビッグデータ分析で導き出した有効な販売戦略を全店舗に行き渡らせることは容易ではなかったのです。店舗ごとに異なった販売手法・支払い方法・発送方法、全て販売店が独自に判断して取り入れている手法なので、楽天側がこれに統一していきたいといくら考えても店舗側が対応してくれないと実現できないシステムでした。

このままでは、Amazonにおいていかれる!楽天(三木谷社長)は焦ったはずなのです。いまさらAmazonのようなスマートな販売システムに変えようはない。しかし市場のままでは、現状維持が精一杯。さらなる飛躍のためには、ビッグデータ分析をすばやくフィードバックできるシステムに切り替える必要がある。そこで考えた方法が市場への入口と出口、そして顧客との接触点の3点を楽天が一手に担えるシステムにすること。

商品画像ガイドラインによる商品展示方法の統一(入口)・楽天ペイによる決済方法の統一(出口)・ワンデリバリー、チャット、メッセージの導入(顧客接点)によって市場からテナント式スーパーマーケットに変わろうとしているのです。この判断は間違っていないでしょう。今のままではAmazonにおいていかれる可能性が高い。一手遅れるだけで大きく水を開けられるギリギリの時期ではないかとも思います。なので今回示した方針をワンデリバリーまで確実に実行していく必要があるのです。さらに携帯事業を必ず成功させる必要もあるでしょう。それに合わせたさらなる一手も必要です。そこまでできてAmazonにまけない楽天になれるのではと考えます。

なので、個人的には楽天のこの方針は間違っていないし、今しなければ間に合わないのではとも思っています。ただ、出店者にとっては大きな負担を強いるもので、雑多な市場方式で販売を伸ばしてきた店舗にとっては個性を埋没させかねない受け入れがたいものであることも想像できます。現状維持が一番楽なのですからね。いらんことをして売上(利益)が下がったらどうしてくれるんだ!という気持ちもよくわかります。

でも、楽天は着実に実行していかなくてはならないのです。そのためには出店者の反発を最小限に舵取りしていく必要があります。大きな反発を招くと総スカンを食ってわやになりかねない。難しい舵取りになるでしょう。やり遂げられるかどうかで今後の楽天の命運が決まるかも・・・とも思っていたりするのです。