「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡」太田紫織 電子書籍

「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡」は、櫻子さんシリーズ最新作のシリーズ第十一弾。

このシリーズは、タイトルにナンバリングがないので何番目のタイトルなのかが全くわからないのが難点なのです。なので自分の中での整理のためにもここにタイトルの順番を書き留めておくことにします。

1.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」
2.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み」
3.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘」
4.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶は十一月に消えた」
5.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 冬の記憶と時の地図」
6.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 白から始まる秘密」
7.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 謡う指先」
8.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている はじまりの音」
9.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 狼の時間」
10.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 八月のまぼろし」
11.「櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡」

北海道旭川が舞台の骨にまつわる連作ミステリー。

地主として有名な九条家を継ぐお嬢様である九条櫻子は、早くに両親と弟をなくし奉公人のばあやさんと広い屋敷に二人で暮らしている。彼女は学生時代にあることから骨に興味を持ち、高名な法医学者である叔父に師事するが大学で学ぶことが叶わず、独学で骨について学びいまでは数少ない骨の標本師として活動をしている。

高校生の館脇正太郎は、あることをきっかけに九条櫻子と知り合い、九条家のばあやさんは正太郎に櫻子の弟の面影をみているようでたいそうかわいがってくれ、九条家にたびたび出入りするようになる。正太郎は櫻子の骨の標本作りに不快感を覚えるが、動物の死骸や骨の収集・標本作りに付き合い櫻子の豊富な骨の知識にふれるうちにその奥深さを知り、人の生死について考えるようになり、法医学者を目指そうと心に決める。

正太郎が櫻子さんと行動をともにしていると、白骨や遺体に度々出くわし、叔父から学んだ法医学の知識と骨の知識、そして鋭い観察眼と洞察力で事件の解決に導いていく。単純に言うとそんなストーリーが展開されて話が進んでいくのですが、九条家の抱える家族の問題(母親や弟の死について)や友人知人の抱える問題が絡んだり、法医学者の叔父(今は病に伏している)が気づき櫻子さんも追おうとしている蝶形骨に執着する未知の犯罪者・花房(ファントム)の存在が不気味な影となり重層的なストーリが展開されます。

櫻子さんの人の感情に左右されない(理解できない?)合理的な判断と行動が危うくも魅力的で、骨好き死骸好きの変人さと黒髪ロングスタイル抜群の美しい女性とういギャップが何とも言えないいいキャラクターに仕上っています。また、北海道の風物詩や風景、名産品などの描写がうまく織り混ぜれ骨や死骸と言った殺伐としがちな話題の中にほのぼのとした雰囲気をうまくまとわせられています。

11作目の 「蝶の足跡」は、少し中だるみな感じの印象を受ける作品でした。ストーリとしては悪くないのですが、メインストーリーであるはずのファントムがなかなか姿を表さず、未だに影がちらほら感じられる程度で、櫻子ファンとしてはそろそろ直接対決の様な物語を読みたいと期待を寄せてしまうのです。

実写ドラマが始まり、櫻子人気を引っ張って売上を伸ばそうなんて意図があるのかないのか・・・・そろそろ物語的にも一山ほしいところです。

ドラマの一話目観ましたが、観月ありさの櫻子さんは頑張っているのはわかるのですが違和感ありすぎですね。せめて後10歳若い女優さんを使ってほしいところ。正太郎の設定も26歳で少年と呼ばせるのも無理やり過ぎ。なんか10年後の櫻子さんと正太郎を描いている感じ、なら少年と呼んでいてもわかる気がするのですが・・・