hont を眺めていて、期間限定40ポイントっていうのを見つけてしまいました。高ポイント・高割引に弱くついつい惹きつけられて、面白そうな作品が40ポイント対象になっていないかと探していたところ・・・
見つけてしまったのです。
「13・67」
華文ミステリー最大の話題作!第二回(二〇一一年)島田荘司推理小説賞受賞作家・陳浩基(チンコウキ)の最新作。香港ミステリー界の新鋭が描いた、警察小説の傑作。
と、なかなかの力の入れよう。レビューも☆4つと高評価。なのでとりあえずポチっておいたのです。
13・67
華文(中国語)ミステリーの到達点を示す記念碑的傑作が、ついに日本上陸!
現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)をたどる逆年代記(リバース・クロノロジー)形式の本格ミステリー。どの作品も結末に意外性があり、犯人との論戦やアクションもスピーディで迫力満点。
本格ミステリーとしても傑作だが、雨傘革命(14年)を経た今、67年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデェンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分。
2015年の台北国際ブックフェア賞など複数の文学賞を受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、各国で刊行中。映画化件はウォン・カーウァイが取得した。著者は第2回島田荘司推理小説賞を受賞。本書は島田荘司賞受賞第1作でもある。
〈目次紹介〉
1.黑與白之間的真實 (黒と白のあいだの真実)
2.囚徒道義 (任侠のジレンマ)
3.最長的一日 The Longest Day (クワンのいちばん長い日)
4.泰美斯的天秤 The Balance of Themis (テミスの天秤)
5.Borrowed Place (借りた場所に)
6.Borrowed Time (借りた時間に)amazon より
あらすじ
主人公は、クワンとローの二人の香港警察に所属する刑事。クワンは上級警視としてロー警部の上司であり、退職後もアドバイザーとしてロー警部の教官として指導にあたっていた。クワンは、香港警察の名探偵として有名で数々の難事件を解決してきた実績があり、ロー警部はその補佐としてクワンに師事し個人的にも親子のような関係であった。
2013年、クワンは病気に伏せっており余命幾ばくもない状態で意識不明のまま入院生活を送っていた。ロー警部はそんなクワンに事件解決の協力を求める。実はクワンは意識不明なのではなく意思疎通ができない状態であり、耳は聞こえ脳波を測定する特殊な器機とつなぐことで<YES><NO>の意思表示は可能で、名探偵としての頭脳は衰えることなく発揮できるのである。病室に事件の容疑者たちを招き、ローの主導による質問にクワンがコンピューター画面を通して<YES><NO>で答えるという推理劇が展開される。
<YES><NO>だけで答えられる安楽椅子探偵・クワンとそのワトソン役をつとめるローのコンビが事件に挑む!という感じで物語が始まります。
第一話「黒と白のあいだの真実」でクワンが命を落とすところから物語は時代をさかのぼって語られ、最終話の第六話「借りた時間に」で若き日のクワンが上司に認められ出世街道を歩み始める事件にいきつきます。クワンの半世紀に渡る人生を遡りかつ、英国の植民地としての香港から中国へ返還された後の香港へ変わりゆく時代の背景が物語の中に旨く落とし込まれ表現されています。あまり触れることのなかった香港の英国と中国に翻弄される特殊な歴史を垣間見ることができます。
読み終える最後の最後で最終話の「借りた時間に」から第一話「黒と白のあいだの真実」へリンクさせ時代を超えたつながりを物語に落とし込んだ手法には感嘆させられます。
感想
連作短編(中編)集という形を取りながら、一話ごとに時代を遡って行くことで登場人物の詳細が次第に明らかにされていく。そして、その時代背景に応じた話題で香港や香港警察の辿った歴史にも触れることになる。なかなかうまい手法をとっていますね。各話それぞれに中短編ミステリーとして完成された作品となっていて十分に楽しめます。そしてクワンの半生を通して香港社会の変遷やクワンと彼に関わった人たちの人間模様が描かれます。警察小説というより社会派ミステリーというほうがしっくりくるのではないでしょうか。
第一話では、実はローの名探偵ぶりが発揮される内容となっているのですが、読み進めるとクワンに師事したローの成長ぶりも明らかになっていき、クワンの意思を継いだ後継者として独り立ちしたローの立ち位置もしっくりと納得できるようになっていきます。
個人的には、華文小説は中国の人名の読みがなじまず登場人物の相関関係がどうも把握しにくくいつも苦労するのです。この小説については各話独立した短編で完結しているので登場人物も限られ、翻訳者の方の日本人にも読みやすい翻訳への配慮がうかがえ、それほど苦なく読むことができました。