紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官 川瀬 七緒:著

法医昆虫学捜査官シリーズ第6作目の作品です。赤堀涼子絶好調です。

紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官

あらすじ

東京都内の古民家で、おびただしい血痕と3本の左手の小指が見つかった。住人の遠山という高齢夫婦とその客人のものと思われたが、発見から1ヵ月経っても死体は見つかっていない。いっこうに捜査が進展しない中で岩楯警部補は、相棒の鰐川と事件現場を訪れ近所の聞き込みを始める。他方、法医昆虫学者の赤堀は科捜研を再編成した「捜査分析支援センター」に配属されていた。法医昆虫学と心理学分野、技術開発部の三つが統合された新組織だ。所属のせいで事件現場には立ち入れなくなったものの、同僚のプロファイラーと組んで難事件に新たな形で挑戦を!

amazonより

古い日本家屋の住宅で、切断された3本の左手小指とおびただしい血痕が見つかる。行方不明の遠山夫妻とその客人と思われるが遺体は行方不明で、客人の身元も不明のままであった。法医昆虫学者の赤堀は科捜研を再編成した「捜査分析支援センター」の配属となり警察組織所属の捜査官となり、腐敗した小指に付いた虫の分析に当たっていた。分析の結果事件発日時を特定したものの、一本だけ食べ進められている速度が遅いことに違和感を覚えていた。

聞き込み調査の結果、遠山夫妻はアルコール依存症を克服するためのサークルに参加し個人的に支援していたこと、妻は草木染めにのめり込んでいたことが判明する。また、家屋の再調査をした赤堀はやけど虫が大量発生している状況を確認し大量発生の原因究明にあたるのであった。

「捜査分析支援センター」所属のプロファイラーである広澤は、犯人は以前にも同様の事件を起こしているとの分析結果を発表するも捜査本部では取り合われず、赤堀担当の岩館刑事が広澤がピックアップした類似事件を調査することになる。その結果、23年前に酷似した事件が見つかり・・・

感想など

今作から赤堀涼子は法医昆虫分析管として警察組織の「捜査分析支援センター」所属で活動することになる。「捜査分析支援センター」は心理学分野、技術開発部にくわえ法医昆虫学で編成された新部署で、実績を挙げなければいつ解散させられてもおかしくないようなお荷物弱小部署である。が、赤堀にとっては法医昆虫学の地位向上を目指す第一歩であった。

また、アルコール依存症で現在行方知れずの父に悩ませれ続けた過去が唯一の警察内の理解者である岩館刑事へ吐露するという形で、ノーテンキな明るさに隠された赤堀の心の一面が明かされている。

プロファイラーの広澤技術開発舎の波多野といった赤堀に絡む新キャラクターも登場しある意味、法医昆虫学捜査官シリーズ新章突入といったところでしょうか。

ウジやハエや蜘蛛などおびただしい数の虫がそこかしこでうごめく気持ち悪さがあるもののそれに相対する赤堀のユーモラスな姿で中和されていているのがこのシリーズの特徴と言えるでしょう。推理小説という分野ではありますが、読者が頭を悩ませ推理するようなものではなく法医昆虫学者の赤堀の思考や分析により捜査が進んでいく過程を楽しむ警察小説といった趣の作品なのです。