アーモンド〜本屋大賞1位受賞の韓国ベストセーラー小説

2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位・韓国で40万部突破・13ヵ国で翻訳されているベストセーラー小説ということで手にとってみました。個人的には、ミステリーが好物なもので普通なら手に取らない作品ではありますが、初韓国作品ということもあり興味を惹かれたのです。

アーモンド

概要紹介

ソン・ウォンピョン (著), 矢島暁子 (翻訳)

“感情”がわからない少年・ユンジェ。
ばあちゃんは、僕を「かわいい怪物」と呼んだ――

「ばあちゃん、どうしてみんな僕のこと変だって言うの」
「人っていうのは、自分と違う人間が許せないもんなんだよ」
扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ無表情でその光景を見つめているだけだった。
母は、感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記させることで、なんとか“普通の子”に見えるようにと訓練してきた。
だが、母は事件によって植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちになってしまう。
そんなとき現れたのが、もう一人の“怪物”、ゴニだった。
激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく――。
「わが子が期待とは全く違う姿に成長したとしても、変わることなく愛情を注げるか」
―― 出産時に芽生えた著者自身の問いをもとに誕生した、喪失と再生、そして成長の物語。

引用元:Amazonより
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89-%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A7%E3%83%B3/dp/4396635680

作品の概要については、Amazonで的確に説明されているので引用紹介させていただきました。

感想など

韓国の小説が日本で話題になったという記憶は私にはなく(感知できていなかっただけかもですが)、この「アーモンド」という題名の小説が韓国小説初体験になります。韓流ブームで音楽や映画・ドラマなどにふれる機会が多いにもかかわらず小説や文学といった方面で話題になる作品がないことが不思議ではありました。

「アーモンド」の作者は、映画シナリオや監督で活躍されたのちに発表された小説ということで、この作品の作風にもなんとなく納得させられるものを感じたりしました。韓国では、人気の映画やドラマの脚本にその方面の才能が集まってしまっているということなのでしょうか?

ソン・ウォンピョン
1979年、ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学ぶ。韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年、第6回『シネ21』映画評論賞受賞。2006年、「瞬間を信じます」で第3回科学技術創作文芸のシナリオシノプシス部門を受賞。「人間的に情の通じない人間」、「あなたの意味」など多数の短編映画の脚本、演出を手掛ける。2016年、初の長編小説『アーモンド』で第10回チャンビ青少年文学賞を受賞して彗星のごとく登場(2017年刊行)、多くの読者から熱狂的な支持を受けた。2017年、長編小説『三十の反撃』で第5回済州4・3平和文学賞を受賞。現在、映画監督、シナリオ作家、小説家として、幅広く活躍している。

引用元:Amazonより
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89-%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A7%E3%83%B3/dp/4396635680

「アーモンド」の作風の特徴は、感情を持たない主人公の少年の目を通して紡がれる物語であるというところです。感情を排除した彼の目に映る事象が淡々と綴られ物語が進んでいきます。幼少の頃の変な子供と思われないようにするための感情表現を暗記させ普通の子に見えるようにと教育する母の苦悩、「かわいい怪物」と呼びながら普通に接し続ける祖母の愛情、など彼に接する人たちの彼に対するあふれるような愛情がその淡々と綴られる文章のなかにあふれているのです。

感情的装飾のない文章は、淡々としながらもテンポよく読みやすいものでありながら、読者の感情には強く訴えかけるものになっています。

感情に左右されない彼には、純粋に物事の本質が見えているのでした。暴力的で周りに迷惑な行動しか取れず怪物よ呼ばれているゴニのことも繊細で優しい心持ちで美的センスに優れていると理解して友人として付き合います。

戦争で虐げれれている弱者をテレビ見て、なぜ助けてあげないのかと疑問を問うた答えが遠い国だからどうしようもないということに対しそのときは納得したものの、彼の家族が暴漢に襲われた時誰も彼らを助けてくれなかったことで、身近に起こる不幸に対しも遠い国の出来事と同じように人は手を差し伸べることはないのだと理解し、遠いとか怖いとか理屈をつけて関わらないようにしているだけと人の本質を理解するのです。

普通の人なら自暴自棄になって逃げ出したり引きこもったりしていてもおかしくないような状況に置かれながら(その象徴がゴニなのか)感情を持たないために何事もないように普段どおりにしか行動しない(できない)主人公が行き着く先に待っている未来は・・・

いろいろと考えさせられる作品で、読みやすく(翻訳者さんの実力も大きいのでしょう)ミステリー以外はあまり読まない私でも楽しめる作品でありました。

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